各企業において様々な働き方に対応できるインフラ構築も落ち着いた時期じゃないかと思いますが、IPv6だけは相変わらず導入できそうな気配を感じませんね。
やろうと思えばできるのですが、企業インターネット黎明期あった、グローバルアドレスを社内IPとして利用してしまう失敗が脳裏をよぎって躊躇してしまいますよね。「OCNエコノミーで安定高速インターネット接続環境を!!」みたいなことを言ってた時代に現地調査はいると「170.0.0.1/24」とかが設定されているネットワークに出会うことがたま~にありました。社内ネットワークで利用できるのは3種類のプライベートアドレスは今では当たり前ですが、Windows3.1時代にネットワークを構築した企業にとっては当たり前というとかわいそうですね。RFCの公開が1994年ですし。
インターネット接続環境はインフラ環境が単純な家庭用サービスが先行して普及するのは自然のことで、IPv6もその一つですね。フレッツ光プレミアム以降のサービスを契約すると気にすることなくIPv6対応ルーターが設置され利用できる準備が整いますので、利用者は意識してなくてもIPv6通信の普及は進むし、PPPoE遅い問題を目にした方はIPv6の積極的な導入に動いたのではないでしょうか?
そういう流れで会社のインターネット遅い!!IPv6対応して高速化しろよ!!って意見がちらほら聞こえているのです。企業ネットワークを変化させることって難しいのです。トップダウン型で取り組み始めても費用を提示するとNGってこともあるし、そもそも製品の選択肢が無かったり、性能不足、ノウハウ不足、パートナー不在と費用提示の前にとん挫することもあります。うまくいっても利用者側から変更を拒否されたり、利用システムが未対応だったりと課題もたくさんあり「今は変化できない」がず~っと続いてしまいます。
新規小規模拠点なら導入課題は少ないですが、既存小規模拠点の場合は予算的に不可というケースが多いのでは?一般家庭用機器ネットワーク拠点なら設定変更程度で済みますけど、VPN装置があったりすると対応機器に買換えが必要だったりしますが”壊れていない” ”今問題なく業務出来ている”という状況と”見えない効果”がブレーキを掛けます。だって「高速化した分、売り上げも上がるよね?」って現場が言われると無理、いらないって答えるよね。
そんな感じで変化はとても難しいのですが、インフラ担当としては何年も先を見据えて機器選定をしているので買換えタイミングでは高速化、もちろんIPv6対応も考慮しているわけです。機器に関しては予算が付けば解決できるし、利用システムも対応が徐々に増えているので何とかなるかな~という感じではあるのですけどね。
そんな中、絶対に無理だな~と感じているのが”定番設計が存在しない”という問題。
IPv4には”インターネット接続ゲートウェイでNATとLAN側はプライベートアドレスを使う”が最低限の定番設計で、拠点間で異なるサブネットを使っていれば統廃合に対して部分的な変更だけで対応できる。
この定番設計で構築されたネットワークをIPv4/IPv6デュアルスタック化しようとするといくつかの問題が解決できない。「あ、無理だ~」というのが私の感想。
何が無理って「プロバイダー変更のインパクト」「IPv4と同じセグメント分けが出来ない」って話だけでも、結構無理~って感じる。
プロバイダー変更のインパクト
IPv4はゲートウェイでグローバルアドレスに変換して、内部はプライベートアドレスを使用するので、プロバイダーを変更した際にグローバルアドレスが当然変わるけど、ゲートウェイの設定変更だけで利用者に影響でない。
これが、IPv6の場合、内部もグローバルアドレスを使うので、プロバイダー変更ですべてのIPアドレス設定に影響が発生する。自動設定だから問題ない?いや、端末への反映時間やDNSやサーバーの設定変更などを考慮すると「ISP障害だから別のISPに切り替えて対応しよう」ってのがIPv4のように気軽に出来ない。常に利用できる状態にするという設計になるのだろうか?
または、IPv4と同じようにユニークローカルアドレス使えばよいじゃないって話になるんだけど、NAT6対応のゲートウェイが必要になる。すべての機器が対応していれば話は簡単なんですけどね。
IPv4と同じセグメント分けが出来ない
IPv6はグローバルアドレスを使う前提なので、プロバイダーから割り当てられるIPアドレスを分割できる/56や/48だと良いのですが、/64だと無理ってなります。だって分割の最小が/64だから・・・これ以上分割できない。
PPPoEや専用線契約なら/48など潤沢なアドレス範囲を使えるので分割できるけど、IPoEだとひかり電話契約ありで/56、ひかり電話契約なしだと/64になるので必要セグメント数にもよるけど1:1に出来なければIPv4のセグメント統合が必要になる。
2022年現在はIPv6に変更する目的は「輻輳状態にあるPPPoEを迂回する」だと思うので、輻輳していないかもしれないIPv6のPPPoEは避けたいと考えるし、専用線費用なんて割に合わない。1Gbpsの専用線って月額いくらなんだ?100万位?
デュアルスタックへの準備は本格的に考えているけど、課題はたくさんありそうだし、何より定番設計が無さそう。ってのが一番痛いよね~。まだまだ企業内ネットワークのIPv6対応は先の話になりそう。